知的障害とはどんな障害か?特徴と診断基準を説明

知的障害とはどんな障害か?特徴と診断基準を説明

 この記事では知的障害について説明をさせていただきます。

 知的障害の特徴。

 どのような基準で診断されるのか。

 軽度から最重度までの違いについて説明させていただきます。

知的障害とは?

 知的障害について法律による具体的な定義条文はありません。

 厚生労働省は知的障害について、

「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義しています。

つまりは、知的な能力が低いこと、社会の適応能力が弱いことから日常生活での困りごとが概ね18歳までに生じます。

知的障害診断基準

知的障害は以下の3つの条件を満たすことによってはじめて知的障害と診断がされます

  • 知能検査において、IQが70未満であること
  • 日常生活への適応能力が低いこと
  • これらが発達期(概ね18歳まで)に見られるということ

 診断基準には以下の2つがあります。

  • 「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)
  • 「ICD-10」(国際疾病分類第10版)

「DSM-5」はアメリカ精神医学会の出した精神障害のみの診断分類です。

「ICD-10」は世界保健機関(WHO)が世界水準で公表されているこの世のほぼすべての疾病の診断分類です。

上記3つの基準はこれらの診断基準に共通しています。

知能検査について

IQは知能検査によって測定されます。「ウェクスラー式知能検査」というものが児童期や成人期においてもっともよく使われている知能検査です。

ウェクスラー式知能検査は適用年齢によって以下のような種類に分かれます。

検査名対象実施時間
WISC
(Wechsler Intelligence Scale for Children)
通称ウィスク
児童
(5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月
概ね90分以内
WAIS
(Wechsler Adult Intelligence Scale)
通称ウェイス
成人
(16歳〜89歳)
概ね90分以内
WPPSI
(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)
通称ウィプシ
幼児用
(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)
概ね60分以内

IQは数値が高いと知能指数が高く、低い方と知能指数が低いとされています。一般的には100前後が標準とされていて、110~120となってくると知能指数が高い傾向にあります。IQが70以下である場合、数値によって軽度、中等度、重度、最重度の4つに分けられます。

重症度IQ
軽度51~70
中等度36~50
重度21~35
最重度20以下

しかし、知能指数(IQ)だけで判断するのではなく、知能指数(IQ)と日常生活能力から総合的に判断されます。

日常生活能力における3つの基準

日常生活能力の基準には3つの考え方があります。これは先ほども出てきましたアメリカ精神医学会が出している「DSM-5」という診断基準にマニュアルがあり、「概念的領域」、「社会的領域」、「実用的領域」という3つの領域から判断されます。

概念的領域とは

他の人と意思の交換をする。記憶をする。字の読み書きをする。算数などの計算をしたり、お金などの概念に対してどれくらい理解できるか。

社会的領域

対人的なコミュニケーション能力、友情関係を築く能力、意思決定や危機回避などの社会的な判断能力。

実用的領域

食事や身支度、入浴、排せつなどの日常生活の能力。その他、仕事など社会活動にどれくらい参加できるかの能力。

この3つの領域おいてどの程度の能力を持っているか、どの程度日常生活に制限がかかっているかというところから程度が判断されます。

軽度の場合

  • 支援があれば、書字、算数等の概念を理解できる
  • コミュニケーションは理解できるがパターン化していて、一般的な水準よりやや未熟。
  • 社会的な判断は未熟で危険性の理解も限られてしまう。
  • 日常生活で身の回りのことは概ね自分で行えるが、複雑な日常生活の処理に関しては金銭管理などの複雑な物に関しては支援が必要となる。
  • 仕事については、多くの場合、字の読み書きや計算等の概念的な領域の能力を必要としない仕事に就くことは可能。

軽度の知的障害の方の中には一般就労されている方もいます。

中等度

  • 文字を書く、読む、計算をするという概念の理解に関しては、概ね初等教育(小学校)程度のレベルにとどまるのが特徴
  • コミュニケーションは単純だが友人関係や恋愛関係を築くこともある。
  • 日常生活において、身の回りのことは自分でできるよういなるが、スキルの習得に長い時間がかかってしまう。
  • 仕事について、字の読み書きや計算等の概念やコミュニケーションが必要でない仕事であればつける可能性がある。しかし、同僚や上司の支援がかなり必要となる。

重度

  • 文字や数、時間などの概念の理解がほとんど難しい、
  • 単純な会話やジェスチャーによるコミュニケーションが理解できる。
  • 食事や身支度、排せつなどのすべての日常生活上の行動すべてに支援が必要。

最重度

  • 会話や身振りによるコミュニケーションの理解が難しい
  • または限定的である。
  • 日常的な身の周りの世話、健康維持、安全性を保つなお、生活全般すべてにおいて介助が必要。

ふわまる
ふわまる

以上が日常生活能力を考えた上でのおおよその目安となります。

IQと日常生活能力を総合的に照らし合わせて最終的に軽度であるのか、重度であるかが判断されます。

チェックポイント

相対的にIQが高い人の方が日常生活能力が高くなる傾向にある。

しかし、場合によってはIQは低くなくても日常生活能力が低い場合もある。このような場合、IQは軽度であるが、日常生活能力としては中等度ということがある。

知的障害がある場合IQは低い傾向にあるが

知的障害のある方の特徴として、複雑で難しい作業はできないかもしれないけど、与えられた仕事をちゃんとこなすということができている。

公的なサービスを受けるための障害者手帳について

知的障害の診断が出ると障害者手帳を取得することができます。知的障害者の手帳は療育手帳という名前ですが、自治体によっては「愛の手帳」、「緑の手帳」と呼ぶ自治体もあります。

手帳は公的なサービスを受けるために必要になるほか、取得することで障害者雇用での就職が可能です。

知的障害のある方の特徴について

知的障害をはじめ、自閉症・発達障害のある方たちの特徴として、その障害による困りごとが他の人から目で見てわかりにくいという点にあります。

視覚に障害がある方の場合、外出の際には白杖と呼ばれる白い杖を使用して、歩行中には前に何か障害物がないかを確認しながら歩きます。盲導犬を利用する方もいます。目で文字が読めないかわりに点字や音声によるサポートを受ける必要もあります。

身体に障害のある方で足が不自由な方は車いすを使用します。初めて会った方でも不自由さやどのようにサポートをすべきかわかると思います。

知的障害のある方の場合、ひと目ではその方の不得意な点や暮らしの中での困りごとを理解するのは難しいです。その方のことをよく知り、日常生活における苦手さや得意なこと。困りごとを理解し、本人ができないことをできるように補うことができる支援者が必要です。

一般就労の場面においてはジョブコーチや上司、同僚の支えが必要です。在宅や通所施設、入所施設においても人によるサポートが必要です。

まとめ

IQの数値や日常生活能力は支援を行う上での目安になります。知的な障害が重く、日常生活能力が低い場合においても、その方が主体的に生活を送れるよう苦手な部分を補い、強みとなる部分を活かせるように支援をしていくことが重要と考えます。

社会全体が障害のある方たちの暮らしにおける様々な環境を整備し、適切なサポートを受けることができる体制を整えることができれば、日常生活や社会生活で不便さや制限を軽減することができます。

障害のある方々の支援に携わる福祉職に限らず、すべての人が障害について少しずつ理解することで、より障害者の方々が暮らしやすい社会を作る手助けになると考えます。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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